Vol.54 平成11年9月
発行:兵庫県立丹波年輪の里(林産指導課)




トピックス 1
県立高校の木質内装化

 まだ記憶に新しい須磨の事件や学級崩壊など子供達の異常な行動が見られています。その一因として学校の教育環境の問題も指摘されています。現状は校舎がほとんどがRC造な訳ですが、内装だけでも木質化することで教育環境が改善されるとの報告もあります。
 兵庫県では、この夏休みを利用して、二校の県立高校(鳴尾高校、姫路商業高校)の教室および廊下の改修に県産のスギ内装材が施工されました。
 機会があれば、この内装について教師や生徒の反応を調べて報告したいと思います。

トピックス 2
丹波の小学校に木製机導入!

 学習環境の中に木のぬくもりをと、国産木材で作った学校用の机・イスの普及に取組んでいる『ウッドワーク丹波』(栗田隆夫代表)は、市島町立鴨庄小学校(中村富美代校長)の六年生に兵庫県産ヒノキ材を使用した木製机をプレゼントした。
 八月二十二日に行われた導入式では、「昨年六月にこの運動に取組み、今日やっと皆さんに使ってもらえることになりました。」と経緯を説明したのち、高見 豊さんから、「皆さんが住んでいる丹波の山には、戦後スギやヒノキがたくさん植えられたが、安価な木材の輸入などで国内の山林が顧みられなくなり荒れている。木材は再生可能な資源であり、木製の机・イスを大切に使うことは、私たちの環境を守ることにもなります。と説明を受けた。
 組立は、使用する児童がお父さんやお母さんに手伝ってもらいながら、約二時間ほどかかったが、できたイスに早速座って木の感触を確かめる子供もいた。最後に児童代表から「木の机で勉強することを楽しみにしています。」とお礼があり、ウッドワーク丹波から、「木はやわらかいけど、傷つきやすいので大切に使って下さい。しかし、使いにくいところや壊れたりしても、取り替えが簡単なので遠慮なく言ってください。」と説明があった。
 来年三月までモニターとして児童から使い勝手や不具合などを聞きながら、改良を重ねていく予定。
 なお、当日組立た机とイスは柏原農林事務所・兵庫県林務課・丹波年輪の里の三カ所に展示してあります。


木材の含水率

 昨今性能規定化などで含水率を○○%以下にしなければならないなどといわれますが、実際のところ、木材の含水率はどのようなものでしょう? 木材の場合、重量から測定する場合(全乾法)と含水率計による測定がJASで定められています。JASの全乾法は小試験体を用いるた、製品1つ1つの含水率を示すには適さない。また、木材用の含水率計がありますが、かなり誤差があるとの指摘もあります。
 ものすごく荒っぽいやり方ですが、次の例に示すやり方も一つの指標とにはなると思います。

 製品の重量を測定すればおおまかな含水率がわかります。ただ、スギの場合、比重にバラツキが大きいので誤差は結構あります。
 右の例はあくまでも平均的なスギの場合です。年輪幅の違いなどで比重は変化します。
 年輪幅の狭い材など比重が大きければ、同じ重量なら、含水率は低くなり、逆に比重が小さければ、含水率は高くなります。

 木材は一度全乾しても水分を吸湿します。しかし、一度乾燥すると図のように乾燥と吸湿で過程が異なります。
これを木材における「水分の履歴現象(ヒステリシス)」といいます。
 通常、乾燥過程より吸湿過程のほうが2〜3%低く、一度乾燥すれば吸湿しにくくなります。これが人工乾燥が必要な一因です。

「水中貯木」で乾燥?

 伊勢神宮の遷宮では長期間水中貯木処理した木材が使用されていますが、水中貯木の意味は何でしょうか。
 水中貯木すると木材の中に水が浸透する際に水中のバクテリアなどの細菌が侵入し、木材の細胞の通道組織である壁孔などを破壊するので、水分の通道が良くなります。結果として木材を乾燥しやすくなるので乾燥前処理の一つになるのです。ただ処理に長期間を要するので一般には難しいでしょう。

参考文献
1)木材活用辞典:木材活用辞典編集委員会
2)コンサイス木材百科:秋田県立農業短期大学木材高度加工研究所
3)木材の人工乾燥


木造建築物探訪

加古大池管理棟
 寛文年間(17世紀中ごろ)に築造された県下最大のため池加古大池の改修に伴って、地域住民の憩いの場として利活用するため整備されている施設で、兵庫県の公共施設木造化の取り組みに沿って木造で建てられました。
 県産のスギ材が構造や内外装にふんだんに使われています。

※ この建物に利用されたスギ材は70年生末口径30cm長さ12mの材を含め145m3でした。  納材は、波賀町森林組合の協力のもと日本土地山林鰍ェ行いました。


木の本

 
コンサイス木材百科
編集  秋田県立農業短 期大学木材高度加工研究所
出版社  有限会社秋田木材通信社
定価 2,500円+税
 この本は書名のとおり木材についての百科事典で、7章132項あり、各項とも2ページ程度に簡潔にまとめられており、非常にわかりやすい本です。  また、乾燥や強度など今後の法改正で必要になる内容も充実していますので一冊手元に置いておきたい本です。
内容
T 木材の利用と森林資源
U 木材の成り立ち
V 木材と木質材料
W 木材乾燥の原理と実際
X 木材の化学と化学加工
Y 木材・木質材料の強度性能
Z 木質構造と木造住宅
コラム


森のゼロエミッションシンポジウム
 去る9月18日(土)に神戸新聞松方ホールにて「森のゼロエミッションシンポジウム」が開催されましたのでご紹介します。

基調講演
 まず最初に京都大学大学院工学研究科教授の内藤氏によりゼロエミッション全般についての基調講演がなされました。
 ゼロエミッションとは対象システムから排出する全ての形態の廃棄物を限りなくゼロにすることであり、自然収奪的な西洋的近代化からの脱却であると。やっと我々は自然や環境は有限であることに気づいた。
 そして、今までの基本方針にも弊害があった。日本や米国は問題は技術で解決できるという方針であった。しかし自分も工学をやっていなが言うのもなんだが、技術には本末転倒なものが多く、うまい話はない。
 今後は大量生産から多様生産へ切り替え、永く使えるものを作る必要があると。

パネルディスカッション
 基調講演に引き続き、パネルディスカッションが行われました。パネラーは次の方々によりおこなわれました。
コーディネーター 嘉田 良平(京都大学農学部農学研究科教授)
パネラー 鵜浦 真紗子(国連大学「ゼロエミッション」研究構想担当)
田路 勝(一宮町長)
中島 浩一郎(銘建工業叶齧ア取締役)
三輪 昌子(生活評論家)
コメンテーター 内藤 正明(基調講演者)

パネラーの意見を編集者なりにまとめてみました。
 経済成長期にはこんなに環境が悪化するとは思わず、子供達によろこんでもらえると思っていた。そして環境はタブー視されてきたが、九〇年代の環境サミットが転換させた。
 環境問題は企業に主に原因があり、環境を考える上では企業を積極的に取り込まねばならない。そして一つの企業でゼロエミに取り組むのは難しいので異業種との協力が必要である。ただ企業を取り込もうとしても「やる気」(企業で言えば「儲かること」)がなければ積極性は生まれない。今まで環境VS経済であったが、環境で経済を活性化し環境と経済を両立することがゼロエミである。
 また、省エネの面で言えば企業よりも民生部(家庭)のほうがエネルギー消費量の増加率が高い。確かに核家族化による世帯数の増加や高齢化など仕方ない部分もあるが、ムダはある。そのムダを省く必要がある。そして、生産時の直接エネルギーだけでなく、輸送などの間接エネルギーも消費者に見えるようにすべきである。そう考えれば近隣の見える範囲の消費地と生産地で循環に取り組むべきである。

☆今回のシンポジウムではゼロエミッションについてが中心となり「森の」という部分にはあまり触れられなかったので残念でした。次回に期待したいと思います。