Vol.53 平成11年7月
発行:兵庫県立丹波年輪の里(林産指導課)




木材研修会「家をつくるということ」

はじめに
 去る五月二六日に開催しました木材研修会「家をつくるとということ」について一部要約してみました。
 講師の藤原智美氏は木材や家の専門家ではありませんが、家と家族について考えさせられる内容でした。

 アラブのイエメンでは600年前からある日干しレンガ(60cm四方)による伝統建築の高層の街「シバーム」が世界遺産になっています。
 伝統的な素材を使うとどうしても値段が高くなります。これは日本だけではなく、その街でも日干しレンガが高価なためコンクリートで建築される場合もあるそうです。しかし、それには問題はあります。イエメンはアラビア半島の南端に位置する国で暑さの厳しい国です。日干しレンガの家の中は涼しくエアコンの必要はありませんが、コンクリート建築ではエアコンがないと暑くて生活できなくなるそうです。また、日干しレンガの家は誰も住まなくなると元の砂に戻るので、産業廃棄物という言葉は全くいらないということです。
 世界中でも近代に入り住宅はどんどん変化しましたが、特に日本の住宅は変わってしまいました。かつて、農家では住居の中に馬小屋があり土間がありそこでも農作業をおこなっていました。商店では住居と店が一緒で、子供も含めて家族で仕事をしていました。現在問題になっている「家族のコミュニケーションがなくなった」という必然性がなかったのです。
 明治時代に家が住居専用になり、大正時代には廊下ができ個室がつくられました。 そして、戦後大きく変わり、ある建築家によって企画されたつまり新たに作り出された51C型(現在は○LDK)の家でフローリングのダイニングキッ チンがあり2部屋くらいの畳の部屋がつくといったフォーマットの家が普及しました。ヨーロッパでは住宅の伝統がそれほど壊れていません。彼らは元々そこに住んでいて、少しずつ変えてきたにすぎません。しかし、今の日本人は伝統的住 宅ではなく新たに作り出された住宅に住んでいるので伝統という価値観がなくなっていると。
 したがってすぐに新しいものを抵抗無く取り入れてしまうのです。(例:ウォシュレット)
 家族の住むパターンがあるにも関わらずLDKをなんとなく施工してもよいのだろうか。家の発想の原点に箱を発想す るからおかしいのであって原点は中身の家族だと。

おわりに
 今、日本はなりふり構わず突き進んできた経済成長期を終えそのツケが回ってきているように思います。使い捨て社会では伝統文化がどんどん失われてしまいます。家も同様で伝統的住宅が失われてしまっています。 藤原氏の講演を聴き、その地域でもっとも適応した家は、長い年月かかってできあがった伝統的構法を用い、その地域の素材を使うことだと再認識しました。よくヨーロッパと比較しますが、やはりあのすばらしい街並みは伝統を重んじるところにあるのではないでしょうか。

※今回の研修会では、紹介した内容より「家と家族の関わり」についての内容が主であったと思います。大変申し訳ありまんせんがその部分は今回割愛させて頂きました。


木材の強度(木材の強度はどのようにあらわすか?)

 悲しいかな、自然素材でありながら工業製品と競争しなければならない木材でありますが、今後強度性能を表示しなければならない時代がくるでしょう。まあ、グレーディングマシンを導入すれば、ものによっては材に印字までしてくれるので製品は作れてしまいます。 しかし、それが何を意味するかを理解しておく必要があります。  木材の強度を測定するとき破壊してしまっては使い物にならないので、非破壊で強度を測定しなければなりません。そのためにグレーディングマシンでヤング係数を推定します。ところでヤング係数とはなんでしょう?  木材に力を加えると、右図のようにある一定の所までひずみと力が比例関係になります。このときの関係式が

σ = E × ε (σ:力 ε:ひずみ)
で、Eは比例定数みたいなものです。このEと実際に破壊して測定した強度にも関係があります。したがって、Eさえ推定できれば強度も推定できるのです。

※JASでは曲げヤング係数を用います。

 JAS規格では木材の強度を木材の節や割れなどを目で判定する目視等級区分とヤング係数を機械で測定 する機械等級区分とあがあります。
等級 曲げヤング係数(103kgf/cm2)
E50 40以上 60未満
E70 60以上 80未満
E90 80以上 100未満
E110 100以上 120未満
E130 120以上 140未満
E150 140以上

材料 種類 長期許容応力度(kgf/cm3 ヤング係数
(103kgf/cm2
圧縮 引張り 曲げ せん断
製材 スギ(E70) 75 55 95 6 70
ベイマツ(E110) 80 60 100 8 110
鋼材 SS400 1,600 1,600 1,600 924 2,100
コンクリート FC180 60 6 220
 木材の場合、強度にはばらつきがあるため、無欠点材による材料強度をそのまま利用できません。許容応力度は材料強度に安全係数をかけたものです。
 長期許容応力度は構造部材が破壊しないことで、短期許容応力度は地震や台風などの荷重・外力に対し変形しないための強度です。
 おおまかにいって、製材の場合、短期許容応力度は実大材の平均的強度の20〜25%、長期許容応力度ははさらにその1/2くらいになります。
参考文献
1)木材活用辞典:木材活用辞典編集委員会
2)コンサイス木材百科:秋田県立農業短期大学木材高度加工研究所


トピックス 1
皮膚炎などにご用心
  (健康被害を起こす木材)

 木材の中には、その成分により健康に障害を起こすものがあります。ウルシ類が皮膚炎を起こすのはよく知られていますが、先般福岡県で、南洋材(南米産のパウフェロ)により、アレルギー皮膚炎が発症しております。
 その結果、その木材加工会社が労働安全衛生法違反で書類送検されています。なお、加工時に何らかの健康障害を起こす恐れのある木材は約80種ほどあるようです。ご注意下さい。
ウルシ科 カシューナット 皮膚炎 マメ科 アグバ 皮膚炎
ゴンサロアルベス 皮膚炎 メルボウ 皮膚炎、呼吸器刺激
レンガス 皮膚炎 パウフェロ 皮膚炎
マンゴ 皮膚炎 ブラジレッド 皮膚炎
レンガス 皮膚炎 アフロモシア 皮膚炎、呼吸器刺激、喘息
スマック 皮膚炎 ダホン 皮膚炎、呼吸器刺激
マーキングナット 皮膚炎 カリン 皮膚炎、喘息
キョウチクトウ科 レッドペロパ 呼吸器刺激、皮膚炎、喘息 アンゲエリウム 皮膚炎
アフリカンボックスウッド 呼吸器刺激、皮膚炎、喘息 バラ科 パリナリ 皮膚炎
カバノキ科 ハンノキ 皮膚炎 センダン科 サウスアメリカシーダー 呼吸器刺激、皮膚炎、喘息
ノウゼンカズラ科 パリサンドル 皮膚炎 ミバマホガニー 呼吸器刺激、目の刺激、他
ホワイトペロパ 呼吸器刺激、皮膚炎、喘息 サペリ 皮膚炎、呼吸器刺激
ラパチョ 皮膚炎 グアレア 呼吸器刺激、船側、皮膚炎、他
シクンシ科 リンバ、アフアラ 皮膚炎 アフリカンマホガニー 皮膚炎
ヒノキ科 ジュニパー 皮膚炎、基礎代謝刺激 マホガニー 呼吸器刺激、喘息、基礎代謝阻害
ホワイトシーダ 呼吸器刺激、喘息、目の刺激、他 レッドシーダー 呼吸器刺激、皮膚炎、喘息、他
ベイスギ 呼吸器刺激、喘息 アボデイラ 皮膚炎、呼吸器刺激
ネズコ 呼吸器刺激、喘息 クワ科 サチン 皮膚炎、基礎代謝阻害
フタバガキ科 クルイン 皮膚炎、呼吸器刺激 イロコ、、オドウム 皮膚炎、呼吸器刺激
カキノキ科 コクタン、エボニー 呼吸器刺激、喘息 ヤマモガシ科 ノーザンシルキーオーク 皮膚炎
アオギリ科 オベチェ 呼吸器刺激、喘息 サザンシルキーオーク 皮膚炎
マンソニア 皮膚炎、呼吸器刺激、喘息、他 アカネ科 ハルドウ 呼吸器刺激
オトギリソウ科 カロフィルム、ジャカレウバ 皮膚炎、呼吸器刺激、基礎代謝阻害 アビュラ 呼吸器刺激
マンサク科 スウィートガム 皮膚炎 ミカン科 サウスアメリカンアイボリーウッド 皮膚炎
クルミ科 欧州クルミ 皮膚炎 イーストインエィアンサテンウッド 皮膚炎
クスノキ科 ポインズウォルナット 皮膚炎、呼吸器刺激、他 パウアマレロ 皮膚炎
グリーンハート 基礎代謝阻害 オロン、サテンウッド 皮膚炎
マメ科 アカシア 皮膚炎、呼吸器刺激 クローズアッシュ 皮膚炎
アフビジア 皮膚炎、呼吸器刺激、喘息 アラポカ 皮膚炎
リンゲ 呼吸器刺激 ウエストインディアンサテンウッド 皮膚炎、目の刺激、基礎代謝阻害
コーカサスウッド 皮膚炎 アカテツ科 マサランデュパ 皮膚炎
パートリッジウッド 皮膚炎、基礎代謝阻害 レッドランスウッド 皮膚炎
タガヤサン 皮膚炎、喘息 マコレー 皮膚炎、呼吸器刺激、他
ブラジルウッド、ブラックビーン 皮膚炎、喘息、呼吸器刺激 ニヤトー 呼吸器刺激
ゴールデンチエン 呼吸器刺激、皮膚炎 マコレー 呼吸器刺激、喘息、皮膚炎、他
ローズウッド 皮膚炎、呼吸器刺激、喘息 イチイ科 ユー 皮膚炎、基礎代謝阻害
エコム 皮膚炎、呼吸器刺激 スギ科 レッドウッド 皮膚炎、喘息
アヤン 皮膚炎 クマツヅラ科 チーク 皮膚炎、呼吸器刺激
ミサンダ 呼吸器刺激、基礎代謝阻害 デイフンデュ 皮膚炎


木造建築物探訪

香住町高齢者生産活動センター
 大乗寺にほど近い森集落にある福祉村「やすらぎの森」の一番奥まった場所にあるが、高齢者生産活動センターです。
 木造の公共施設にありがちなデザインを駆使したものでなく、その落ち着いた外観は周囲の景色によく似合っています。内部は天井を見せ木造建築の構造がよくわかります。

トピックス 2
県産木材利用木造住宅特別融資制度について

 ご存知のとおり兵庫県では県産木材を利用した木造住宅の建築、建築購入、改築に対しての融資制度があります。しかし、利用件数が低下しており皆様からもPR下さるようお願いいたします。

兵庫県産木材利用木造住宅特別融資の概要
対象 県内産木材使用率がおおむね50%以上の木造住宅の新築、新築購入増改築される方。
融資利率 当初5年間→住宅金融公庫の基準金利マイナス1%(H11.6.16現在1.40%)
      6〜11年目→住宅金融公庫の基準金利(H11.6.16現在2.40%)
       11年目以降→銀行の定める非提携固定型住宅ローンの利率(H11.6.16現在4.44%)
返済期間 25年以内
融資金額 1,500万円以内
(県産木材利用割合が50〜60%の場合は1,000万円以内)
問合せ先 兵庫県農林水産部 木材利用推進室
078-341-7711(内線4122)


LCA(ライフサイクルアセスメント)

 LCAとはその製品に関わる資源の採取から製造、使用廃棄輸送などすべての段階を通して投入資源あるいは排出環境負荷及びそれらによる地球や生態系への環境影響を定量的、客観的に評価する手法です。
 今後、LCAの手法で物が生産されるようになれば、木材も再び日の目を見ることができるでしょう。それは10年後、いや50年後、いや100年後でしょうか・・・。
ライフサイクルと環境負荷の概念図(平成10年度版環境白書から)