| Vol.46 平成10年5月 |
| 発行:兵庫県立丹波年輪の里(林産指導課) |
1はじめに
住宅建築の工期短縮、プレカット化により、木材の乾燥は不可欠となっています。しかし、乾燥機の導入は進んでいないのが現状です。今一度、スギ材の乾燥を念頭においてまとめてみました。
2乾燥機の種類と特徴
主要な乾燥機の種類と特徴は下表のとおりです。乾燥する材の種類によって適する乾燥機が異なります。
| 形式 |
長所 |
短所 |
| 蒸気式 |
乾燥条件の制御が可能
広範囲の樹種に対応可
脱脂、調湿が可能 |
最適条件の確立が難しい
ボイラーが必要で、設備費が高い
|
| 除湿式 |
操作が簡単で変色が少ない
設備費、乾燥コストが安い
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乾燥時間が長い(約15日)
細かな条件設定ができない |
| 高周波減圧 |
乾燥速度が速い(約3日)
厚材の乾燥に向く
変色が少ない
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最も設備費が高い
乾燥コストが高い |
蒸気式は、全国で圧倒的に多く利用されており、ソフト面でも充実しています。
方式はボイラーからの高温蒸気による熱気をファンで循環し、予め設定されたスケジュールで温度、湿度を調整していきます。最近は高高温高速タイプが普及しています。
除湿式はヒートポンプ(エアコンの原理)で除湿乾燥する方式で、板類に適します。
高周波減圧式は、密閉できる缶の中に木材を入れ、減圧することで水の沸点を下げ、高周波で芯から加熱し、一気に水分を押し出します。生材から高周波で乾燥すると多量の電力使用によりコストが高くなるので、含水率40%くらいまでの天然乾燥との併用すべきでしょう。
| 種類 |
内容 |
設備費用 |
| 蒸気式 |
30立米 |
約1,500万円
高温タイプ 約2,200万円
設置費用(基礎、水道電気工事)120万円 |
| 除湿式 |
14立米 |
約1,000万円(一式) |
| 高周波減圧 |
>
5立米 |
約4,000万円
オプションにより変わります。 |
3設備経費
設備費については、蒸気式でトータル1,500万円〜2,500万円、除湿式では1,000万円、高周波減圧式ではかなり高くなります。
乾燥機を選ぶ場合に乾燥材の生産量、乾燥機の回転率、乾燥コスト等を加味する必要があります。高周波減圧式は設備費、ランニングコストは高いが回転が速いので、場合によっては十分成り立つことも考えられます。
4複合乾燥法
今、上記の乾燥機に加え、従来の乾燥法を複合した方式の乾燥機が開発されています。開発者からお聞きした内容についてご紹介いたします。
□高周波蒸気熱源複合型木材乾燥機(ハイドライ)
一つ目は、従来の蒸気式乾燥と高周波を組み合わせた高速乾燥機です。これは、関西電力梶A住金マネジメント鰍ェ共同開発しているもので、秋田木材高度加工研究所の小林好紀氏の技術指導と住金ヒルデブランド梶A山本ビニター鰍フ協力によります。今年下期初め頃に住金マネジメント社から発売の予定で、この設備はすでに特許申請中とのことです。
スギの乾燥が困難なのは内部の水分が抜けにくいことにあります。これは、心材部の細胞内に多量の内容物が沈着しており、水分がスムーズに移動しないためです。
従来の熱気乾燥では中心まで均一に乾燥するのは困難でした。それで考案されたのが次の方法です。
●原理
高周波加熱で内部(心材部)の水分を表層へ押し出す。
↓
同時に表層に押し出された水分を熱気乾燥で取り除く。
高周波をかけると、中心から加熱されます。すると心材部の水分が沸騰し、内部が高圧状態になり、中心部の水分が外側へ押し出されるということです。
●乾燥時間
行程は、加熱が24時間±3時間、養生に半日だそうです。
●設備
従来の蒸気式乾燥機に高周波発振機が附属されています。気になる販売価格ですが、次の仕様で約3,000万円くらいだそうです。
仕様
乾燥材容積・・・22立米
高周波発振機・・40kw
●乾燥コスト
現在の試算で約5,600円/立米です。(設備は10年償却で試算)
このコストには人件費が含まれていませんが、これを加味しても低コストではないでしょうか。
●仕上がり
含水率の分布は中心まで均一で、「割れ」もほとんどなく、変色もないようです。
●その他
材はいくつかのロットに分け順番に高周波加熱されます。これは、高周波容量を最小限に抑えるためと、ロット間のむらを小さくするための工夫がなされています。
●問い合わせ先 住金マネジメント株式会社
設備設計事業部
п@0734-51-3838
□熱風+高周波加熱+減圧乾燥機(ハイブリッド・ドライヤー)
こちらは富士電波工機梶A潟сXジマにより開発されている複合乾燥機で、高周波減圧乾燥機と熱風乾燥を複合した乾燥機です。
熱風+高周波加熱+減圧
高周波加熱と、熱風乾燥に加え、300mmHgの軽い減圧をかけ、水を沸点を80〜90度で蒸発させます。
(通常減圧乾燥は40〜60mmHgの減圧下で行う。)
●乾燥時間・・・ 約3日
●設備
乾燥室の容量は5〜10立米で角形です。高周波の出力は6kwと低出力です。
販売は今年夏頃で価格は3,000万円を少し切るくらいとのこと。
●仕上がり
含水率は均一で良好だそうです。
●その他
スギ、ヒノキ、マツ系の大断面乾燥に最適。
●問い合わせ先
富士電波工機椛蜊繪c業所
п@06-569-7501
5おわりに
今、スギ材の需要を拡大する上で、板材だけでなく厚材も乾燥して供給する必要があります。現在、種々の木材乾燥機が生産されていますが、その中でスギの厚材の乾燥となると、今のところ蒸気式が無難でしょう。しかし、乾燥機を導入したからといってすぐに乾燥材が生産できるわけではありません。機械を使いこなし、心までスギを乾燥するには相当熟練が必要です。
上記で紹介したように、従来の乾燥方法を複合した木材乾燥機も実用段階にきています。これらは乾燥期間も大幅に短縮され、コストも低減されています。今後、実際に製材工場に導入され、完成されていくことを期待します。
八鹿木材市場
八鹿木材市場は但馬地方のちょうど中心にあり、国道9号線と八鹿パイパスの間に位置します。八鹿木材市場の一押しは但馬ケヤキで、艶と粘りがあります。近年良質のケヤキが切り尽くされた感があるものの各地からケヤキが集まってきます。その他には割角のスギが鳥取、四国から入荷します。ヒノキでは色、艶のよい丹後産が入荷します。樹種別の比率はスギが50%、ヒノキ20%、マツ20%、残りがケヤキを含めた広葉樹です。年間3万立米を取り扱っています。
市日は隔週の水曜日です。
木材の割れと強度
木材の乾燥において「割れ」は避けては通れない問題です。材の表面の「割れ」は見苦しく商品価値を低下させます。 では、「割れ」により強度性能も低下するのでしょうか?。
宮崎県でのスギ材についての研究例(1)では、干割れは曲げ強さ及び曲げヤング係数には影響せず、むしろ干割れを生じやすい材はそれらの値が高い傾向を示すことが示唆されています。つまり、強度性能の高い材は「割れ」が発生しやすいということだそうです。
また、「割れ」を防ぐために人工的に「背割」をいれますが、「背割材」と「無背割材」とでは強度の差はあるのでしょうか?。 岩手県(2)や山形県(3)による背割の有無によるの強度性能試験では、「割れ」の言及はないものの、結果はほとんど差はないようです。但し、「無背割材」は木の繊維を切断しないので「背割材」より強度が低下することはないと考えられます。
参考文献
(1)荒武志朗 スギ構造材の干割れが力学的性質に及ぼす影響木材工業Vol.48No.4(1993)
(2)東野 正 スギ背割材の強度性能 日林 東北支誌41(1989)
(3)高橋幹夫 スギ背割材の乾燥特性と強度性能 44回日林学会発表要旨