Vol.44 平成10年1月
発行:兵庫県立丹波年輪の里(林産指導課)
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【 題 字 】鳳翔会主宰 塩 山 重 夫

特集 「今年の木材産業」

はじめに

 今年も「林産だより」をよろしくお願いいたします。  昨年は木材業界にとって大変な年でしたが、これからどのように対応していけばよいのでしょうか。  新年を迎え、今年の木材産業について、それぞれの分野でご活躍されているご三方のご意見を頂戴しておりますので紹介いたします。


木材産業研究所(元日刊木材新聞社大阪支社長)
佐 治 成 男 氏

 平成四年から始まった、戦後四回目の木材産業の大きな変革も、いよいよ最終段階に突入してきた感じである。過去三回の変革とは昭和三十六年、四十八年、五十四年を指すが、それぞれの最終段階では大規模な「倒産」が起こっており、昨年の木材産業関連企業倒産数(三一〇件・一七〇〇億円)は前年比金額で五十二%増、この混乱は少なくとも本年前半は続きそうだから、一つの区切りの時代に入ってきたことだけは確実であろう。  業界の内部を見渡しても、変化・変革の芽吹きと、そこから生まれてくる新しい事象は至る所でみうけられるが、とくに激しいのは業界を取り巻く環境そのものの変化であり、なかでも木材産業の川下に当たる需要分野(主に住宅)産業の変わり方は、まさに変貌といっても過言ではない。  前回の木材産業の変革(昭和五十四年)以降急速にシェアを伸ばしてきた大手住宅(プレハブ)メーカーは、平成四年に全住宅着工の一八.一%までプレハブ比率を高めてきたが、八年は一五%台、昨年は一四.七%まで低下してきた。中堅住宅メーカー、大工・工務店もほぼ同じような比率で低下してきている。では、どこが伸びたかというと、年間一〇〇棟以上の独立系地域ビルダーなのであり、ここが変わってくると資材の発注方法、内容、規格などが変わってくる。しかも、昨年の新設住宅着工工数は概算で一三八万戸と前年比一五%見当も落ち込み、需要量全体がこれほど落ちると需要層変化の影響は一層顕著なものになって現れる。本年の着工数もよくて昨年並みと見られるからなおさらである。為替相場の変動、資材規格のグローバル化など川上の変化も無視はできないが、川下の変化に比べると、そのほど大きなものではなかったといえよう。  しかしながら、こうした変化の中から新しい動きが目立ってきたのが昨年であり、本年もその動きは増幅されそうである。変化があるからこそチャンスが生まれてくるのである。


小野田林材経営研究所
小野田 法彦 氏

「地域振興『木の道』強化を」

 全国の林材業界は昨年の商況不振を引きずったままである。木材商況不振の要因については「消費税がらみによる一昨年の住宅需要前倒しの反動で昨年は建築着工が大幅に落ち込んだ。そしてそれが結果として供給過剰につながった」というのが一般的解釈である。 なるほど住宅需要の落ち込み、その需要に対比しての供給の過剰が、こんにちの丸太、製材品とも商況不振を呼んだ直接的要因であることに間違いはなかろう。しかしそれだけが要因かというとそうでもない気がする。むしろ集成材といった性能部材への転換や流通の短絡化・・・つまり住宅部材を取り巻く加工流通面の変化からきていると表現したほうが適切かも知れない。  そしてこうした構造的変化に一般の製材工場や製品流通業界が追いついていけなくなってしまい、それが回りまわって林家の立木価格を一段と押し下げてしまった。  特に性能部材の浸透による“頭越し流通”で深刻なのが既存製品流通業界である。そこでさすがに消費地の製品市売市場も、市場の買方である小売店、それにつらなる大工・工務店支援のために動き出している。 @大工・工務店がプレカット材を製品市場に所属する小売店に依頼すると、依頼された小売店は市場側が設けたプレカット工場でプレカット加工してもらう、Aそのプレカット材が工務店を経て大工・工務店に渡る、Bなお小売店がパソコンを市場から入手する、C小売店はそのパソコンで大工・工務店、施主に対し、店頭で見積りを行い、同時に住宅の平面図、透視図を示してやるといったシステムである。プレカットが加工支援の役割を果し、見積り、設計が営業支援に通ずる。  兵庫・丹波は早くからネットワーク『木の道』で知られているとおり大工・工務店との連携を強めているところだが、改めてそうした大工・工務店とのつながりを強化し広め、地域材需要を掘り起こし、そして山元還元に努力していくべきである。


京都短期大学商経科 助教授
荻 大陸 氏

 日本の建築材市場はいま「木材革命」といっていい状況が進行しつつあります。昨年来、住宅市場は一昨年の反動で大きく需要が落ち込んでおりますが、そのなかで建築材の集成材化の波だけは急激に進んでおります。柱市場における集成材管柱のシェアは、現在では3割から4割に達しているといわれておりますし、構造材にとどまらず、間柱や樽木などの羽柄材にも集成材が進出しつつあります。在来工法住宅メーカーの最大手、住友林業は、昨年から土台や柱や梁・桁など全部の構造材を集成材にした仕様の住宅を主力商品にすえるようになりました。  集成材化が進むことによって最も大きな影響を受けるのは、いうまでもなく製材業です。わたしは昨年8月末から3週間、北米の林産業をみてあるきました。案の定日本市場の集成材化の波はアメリカ・カナダの製材メーカーを直撃しておりました。たとえば、柱を主体とする角類は、いわゆる現地挽と称して北米材が圧倒的シェアを握っていたわけですが、これがいまやさっぱり売れず、大きなダメージを受けておりました。日本向けに生産していた製材メーカーは、アメリカもカナダもどこでも深刻な販売不振に陥っており、在庫調整のため操業停止に踏み切るところが相次ぎ、経営危機に追い込まれるところもかなりでていました。世界最大の木材企業として知られるウエハウザーの昨年の対日売り上げは前年に比べて七〇%も減少したとのことですし、九〇%減のところさえもあるといいます。  現在、日本の木材市場をめぐって、欧州メーカーが北米メーカーのシェアを食いつつある状況になっています。攻めるヨーロッパ、守る北米、といったところですが、日本の製材業は、いま戦後最大の危機を迎えているといって過言ではないでしょう。


おわりに

 今、木材業界はかつて経験したことのない危機に面していることはまちがいありません。しかし、昨年末には地球温暖化京都会議が開催されたり、ダイオキシンの問題など環境がクローズアップされています。環境面では木材は追い風を受けているはずです。この追い風をどう受け止めていけるかが、木材にかかわるものにとっての課題ではないでしょうか。


木の本
地球生活マガジン*住まいは、生き方
チルチンびと
発行 風土社
定価 980円

今月は趣向を変えて雑誌を紹介します。これは季刊の住宅雑誌で、既に創刊3号まで発行されています。既存の住宅雑誌とは異なり、木材など素材にこだわった木造住宅を取り上げ、部分的にはアウトドア雑誌的な一面を持っているようで、今までにない種類の住宅雑誌という感じです。基本的にはOMソーラーハウスの木造住宅を取り扱っています。しかし、木材やその他の自然素材などの情報が多く記載されているので、こだわりの木造住宅を建てようという方は一読の価値があるのでは。


コラム

 ふと思うことに、木材と消費者との距離がまだまだ遠いのではないでしょうか。例えば、国産材の柱材一本、板一枚購入したいと思っても、どこで販売しているのか、また、価格はいくらかなど一般の人々にとっては、分からないと思います。一般には木材は高いというイメージがありますが、工務店等への卸し価格を聞いて木材はそんなに安いのか驚く人も多いことでしょう(工務店が多く利益をとっているという意味ではない)。また、木材の価格は通常P当たりの価格で示しますが、これが非常に高く感じます。一本当たりになおすと逆に安価に感じますが。それと、木材は生物材料ですから一つ一つ異なるし、収縮もするわけで、そういった基本的な特質も十分理解されていないと感じます。木を知らない人が木造の家を建てれば、当然クレームも多くなるでしょう。結果として大手住宅メーカーのように狂わない集成材が使われるようになります。製品をつくれば売れる時代ではないことは周知のとおりで、消費者の前にものを示さないと木は理解してもらえないのではないでしょうか。
 また、よく「消費者のニーズ」と言われるが消費者の前にものがないのにどんなものを望んでいるかなどニーズなど出てくるはずがないのではないでしょうか。 供給者と消費者の距離をなんとか縮められないものだろうか。


ひょうごの木材市場巡り

編集者の独断と偏見で、県下の木材市場を見てまわろうと思います。まず第一回目として県内の木材市場全体を見てみようと思います。県内には全部で大小合わせて十五カ所の木材市場があります。業界の皆さんは木材市場は木材を仕入れるの欠かせません。しかし一般の方にとっては、農産物や水産物の市場はニュースなどで見かけることがあっても、林産物の市場にはほとんどなじみがないのではないでしょうか。

兵庫県内の木材市場位置図


新年あけましておめでとうございます。

 皆様方にはご家族お揃いで新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。平素は兵庫県立丹波年輪の里に格別のご愛顧を賜り、有難く厚くお礼申し上げます。
 さて、昨年は木材産業においては、木造住宅建設の不振が依然として続いており、低迷から脱却できない状況におかれております。こういった時世の中で、当施設もお陰様で昭和六十三年四月開苑以来クラフト創造遊苑として関係の皆様方の大きなご支援により昨年は十周年を迎え、来苑者数も二百万人を突破するに至り、同慶に堪えません。その間、林産指導課は木材に関する情報誌として『林産だより』を隔月に発刊し、皆様方にお届けして四十三号を発刊するまでになりました。今日まで皆様方のご意見、ご要望等も参考にして、真に木材産業に少しでも多く役立つ内容の充実に努めているところであります。  又、林産だよりの発刊と併行してインターネットのホームページを一昨年の九月開設し、木に関する情報を提供しております。このように当施設はこの二本柱を中心に木に関する情報の発信基地の機能を担っております。今後とも職員一丸となって、木材に関する研修会の開催も含め、より役立つ新しい情報の提供に努めて参る所存ですので、どうか今後ともこの二本柱に目を通して頂きますよう心からお願い申し上げます。最後になりましたが景気回復の早からんことを祈念して新春のご挨拶とさせて頂きます。

兵庫県立丹波年輪の里館長  小 林 敏 彦