Vol.42 平成9年9月
発行:兵庫県立丹波年輪の里(林産指導課)
〒669-33氷上郡柏原町田路102-3
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【 題 字 】鳳翔会主宰 塩 山 重 夫

特集 「集成材」

はじめに


前回の特集「木材乾燥」で、乾燥材の安定供給問題等のために集成材への移行が急速に進んでいることを紹介しました。また、世界的にも集成材を含めたエンジニアリングウッド化の流れもあり、ここで、もう少し集成材についてを考えてみたいと思います。


1.集成材とは

 集成材は厚さ20o程度の挽き板あるいは小角材からなるラミナを繊維方向を平行にして、必要な長さ、幅、厚さに集成し、接着剤を用いて結合した材料です。大手住宅メーカーの展示場を見学すれば集成材のほとんどを見ることができます。和室の無地の柱、長押、鴨居、敷居などよく見ると薄い化粧板が張ってあるのが分かります。階段その他造作材のほとんども集成材です。集成材のメリットは、節や腐れを除くので均質な材料であり、狂いがほとんど無いこと、無垢材と異なり小さな木から大きな材を作ることができ、要求する寸法の材が得られることがあげられます。また、大断面集成材であれば、燃焼すると表面に炭化層を形成し、内部への酸素供給を妨げるため燃焼速度が遅くなります。火災時でも構造体が崩れ落ちることがないのです。(平均炭化速度は1分間に0.6〜0.8mmです。) また、集成材の起源は1900年頃のヨーロッパで、集成材が作られはじめて約100年が経ちます。我が国では1951年に東京四谷の森林記念館が本格的構造用集成材使用のはじまりとされています。

化粧ばり構造用集成材

我が国の集成材の規格(JAS)

造作用集成材 階段材、カウンター材、壁面材など
化粧ばり造作用集成材 鴨居、敷居、長押など
化粧ばり構造用集成材 管柱、通柱
構造用集成材 体育館、ホールなどの大規模木質構造建築

構造用集成材

(年輪の里の建物に使用されている)

2.集成材の現状

現在(平成8年度)我が国の集成材生産量は造作用集成材三八万P、構造用集成材三四万Pで、構造用の伸びが著しい。しかし、生産は我が国で行っていても集成材を構成するラミナについてはほとんど(おそらく9割以上)が外材なのが現状です。 また、完成品として輸入される集成材も増えています。グルーラム(いわゆる大断面集成材)に関しては平成5年から急増しています。これは、平成4年に木造建築物の法改正がなされ、大型木造建築物が増加したことによるようです。化粧ばり造作用集成材については、和室の減少に伴い頭打ちとなっています。造作用では洋室向けの枠材などが伸びています。


3.集成材化の要因

一.乾燥材の供給問題

 住宅建築の工期の短縮化によりどうしても乾燥材を使用しなければ、狂い・収縮等の問題が発生します。しかし、乾燥コストが価格に反映されず、製材業界の無垢材の乾燥への取り組みが遅れました。また、当初乾燥技術の未熟さなどのため、乾燥材として供給された材についても、中には含水率が三〇%程度までしか乾燥されていない材も含まれており、その後の収縮等により無垢の乾燥材全体の評判を落としてしまったという経緯もあるようです。(参)我が国の木材の平衡含水率は一六〜一八%といわれています。含水率三〇%ではまだ収縮します。また、乾燥材のロットが揃わず、結果として、大手住宅メーカーに集成材を採用されてしまったということもあるでしょう。

二.阪神大震災の影響

 平成7年の阪神大震災により住宅の高耐久・高気密に加えて高耐震が必要となりました。強度が無垢材の約一.五倍といわれる集成材が使用されるのは当然とも言えるでしょう。以前は「貼り物の偽物」のイメージでありましたが、「欠点が除去された強度に信頼性のある材」へとーザーの意識が変わってきました。大手住宅メーカーでも集成材の柱を使っていることが逆に宣伝文句になっています。また、世界的に仕様規定から性能規定へ移行しており(右下図参照)、強度にバラツキのある無垢の材より均一で構造計算が可能な集成材やその他のエンジニアリングウッドが使用されるようになってきています。

☆規制転換の具体例

仕様規定
材料 材木、合板、クギ等のJIS、JAS指定
工法 寸法、接合方法、クギの本数間隔等を指定
性能規定
性能 ○○規模の地震に対して耐力が上回ること
評価方法 材料強度の測定試験、地震で働く力の計算方法を規定


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三.価格の低下

 ほとんどの集成材のラミナは外材が使用されています。以前は北米材が中心でしたが平成5年頃からヨーロッパ材の輸入が急増しています。北欧、オーストリアからのホワイトウッド(スプルース)が乾燥されプレーナーがけされコンテナで輸入されています。 また、商社が化粧ばり構造用集成柱(集成管柱)をかなり輸入したようで、競争の激化で価格が低下しました。今年の春頃は無化粧管柱(一〇.五p角で約二五〇〇円/本(七万二千円/P)、桧化粧管柱で約四二〇〇円/本(一二万六千円/P)という状況であったようです。

四.その他

 その他には、最近よく言われるシックハウスで問題となる接着剤についても今のところ問題はなさそうです。「シックハウスを考える会」では、水性高分子-イソシアネート系接着剤(構造用集成材を除く集成材用接着剤の主流)を使用したF0合板ではVOC(揮発性有機物)の空気中への発散は無かったとホームページで紹介しています。


4.兵庫県の集成材

 県内には集成材製造メーカーが一一社ほどあります。  兵庫県がそのうち八社のについて、今年一月にまとめた集成材生産実態調査報告書によれば、集成材のラミナ(挽き板等)の九五%が外材となっています。スギを使う上での支障は「価格が高い」、「材質が劣る(歩留まりが悪い)」ということであります。積極的に県産材を利用しようとしている企業は少ないようです。


5.県産材の利用

 このような状況のもと県産材はどの方向へ進むべきなのでしょうか。無垢でいくのか、それとも集成材を含めたエンジニアリングウッドへ高次加工するのか。 集成材等へ進むにも道は険しいしい。集成材全体の価格も低下していますし、節や腐れの比較的多い県産スギ一等材から果たしてどれくらいの歩留まりでラミナが生産できるでしょうか。どこまで外材集成材と競争できるかでしょうか。 また、ラミナの乾燥はある意味で無垢材よりシビアに管理されなければなりません。どこまでスギ材ラミナの乾燥のバラツキを押さえれるかも課題です。現在県産材を用いて集成材を取り組もうとしているメーカーも無いわけではなく、技術開発に期待したいと思います。


木・person
大阪市立大学
生活科学部生活環境学科 講師 学術博士
  土井 正 先生

 

 大阪市立大学大学院をご卒業後、同大学で木材保存、木質環境、環境制御について研究されておられます。また、建築家が主体となって組織している木構造住宅研究所のメンバーでもあります。阪神大震災のおりには、神戸市や北淡町の被害調査もおこなわれました。先生には八月に開催しました「木造建築物の維持管理に関する研修会」の講師を務めていただきました。全く薬剤を使用せず被害がでてから多量の薬剤を使うより、初期に必要最低限の薬剤を使用することで木材の耐久性を高めておくほうがよいとのことです。


木の本
日本の美林
You can build a house by yourselves,if you want.
著者 井原 俊一
発行 岩波書店
定価 630円

日本の森林でまったく人の手が加えられていないものはほとんどない。美林といわれる森林も、長い期間伐らずに守られてきたものである。同じ自然を相手にしながら、林業と農業の根本的な違いは、守るという課程が加わること。どんなに機械化が進んでも、木は一年に一本しか年輪を刻まない。その形成時間を縮めることができない。森林には環境と資源という二つの価値があり、この価値観の揺れが森林を守り、或は消滅させてきた。自然の恵みである木を大切にし、生活と森とのかかわりをもう一度考えてみたい。


トピックス 六畳一間の工房から

WWMおじさんで有名な宮本良平さんのホームページ


インターネットの普及により木工関係のホームページもますます充実しています。  そのなかでも、ぜひ紹介したいのが、パソコン通信などでWWMおじさん(Wood Worker Miyamoto)として有名な宮本良平さんのホームページ。オイルフィニッシュのコーナーでは亜麻仁油など仕上げ用天然素材について、特色や塗布方法などが詳細に記載されています。また、「WWMおじさんの木工講座」は数年前にパソコン通信ネットにより一〇〇回にわたって連載されたものをもとに、新しく書き直されたものです。  本人は「素人木工で恥ずかしいですが・・・」とおっしゃっていますが、内容はプロのウッドワーカーのレベルです。アドレスは次のとおりです。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/r-mymt