Vol.41 平成9年7月
発行:兵庫県立丹波年輪の里(林産指導課)
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【 題 字 】鳳翔会主宰 塩 山 重 夫

特集 「木材乾燥」

木材乾燥をとりまく現状と乾燥コスト(その2)
−年輪の里 木材研修会から−

 前号に引続き、木材研修会「木材乾燥をとりまく現状と乾燥コスト」の内容を報告します。

(森林総合研究所加工技術科長 久田卓興氏)


建築用材としての乾燥材

表−1 含水率基準(JAS)
用途別 乾燥区分 基準
構造用製材 D-15 15%以下
D-20 20%以下
D-25 25%以下
構造用製材(2×4用) D 19%以下
造作用製材 SD15,D15 15%以下
SD18,D18 18%以下
SD20,D20 20%以下
下地用製材 SD15,D15 15%以下
SD20,D20 20%以下
SD25,D25 25%以下
集成材
   
15%以下
乾燥材はどういうレベルのものが今必要なのか、これは含水率の基準を考えていかなければいけない。JASでは乾燥材に対して、表-1のような規格を定めています。 構造用製材については、三つの種類をもっているわけです。建築関係ではだいたい20%あるいは24%というのが仕様書に指定されるはずです。つまりD-20という製品が本当は必要なんです。「D-25というのは乾燥材でないので駄目だよ」ということはありますが、これはコストとの関係でこういう規格があるわけです。場合によっては使えるんですが、ただ、今求められているのはD-20のレベルなわけです。集成材は狂わないけれど、製材品の乾燥材はまだ縮むという話があります。これは当然こういうものがあるから縮むわけです。 集成材は含水率規格は15%ですから、同じ15%まで乾かしてやれば全然動かない製品になるはずなんですが、きちっとしたD-25の製品でない場合は、25%まで乾かした材といいながら、実際は生に近い動きをします。こういうことから、乾燥材の信用がないのだと思います。きちっとこういうレベルのものを造っていけば、集成材でなくても柱の乾燥材というのは狂いもない、集成材に比べればコストも安いということが認識されていき、こういう製品が市場で認知されるはずです。


乾燥コスト

表−2 スギ心持ち柱材の乾燥経費
乾燥方式 含水率範囲(%) 乾燥経費(円/P)
蒸気(60〜70℃) 100−35 8,900
100−20 13,400
100−15 15,400
高周波減圧(天乾併用) 100−35 6,200
100−20 8,700
100−15 9,900
燃料:重油、貫流ボイラ使用
話の焦点になります乾燥コストの話をしたいと思います。市場では乾燥コストは1万円ぐらいと言われているんですが、これは1万円で乾燥材が出来るのではなくて、乾燥材として建築業界、住宅メーカーからもらえるお金が1万円くらい。「建築業界は製材品の乾燥には一万円ぐらいしか出さないよ」とそれがコストになっているんと言われています。現実にどれくらいいるかというと、私は2倍くらいかかるかと思います。 この考え方ですが、まず直接費として設備費、エネルギー費、人件費、消耗品というものがあります。こういうものは試算しやすいです。ところが間接費として、寸法の歩増しがあります。表-2では、その中に35というのを中段の蒸気式で見てもらいますと、12日かけて35まで仕上げたときに8,900円なんですが、これをD-20、今建築業界で求められている数字にもっていこうとすると13,400円かかります。もし集成材と同じD-15までしようとすると15,400円かかります。本当はここまでいくのが理想的なんですが、こんなにコストがかかってしまうんですね。これでも、きちんと出来るならいいよというふうに建築業界側が受け入れてくれるならば本当は15%仕上げが理想です。これには直接費だけですので、これにプラスαの先ほど言いましたような間接費分を足していくと、これに10,000円アップした25,000円くらいというものであれば、集成材と同じレベルの乾燥材が造られるはずなんです。高温乾燥これからの乾燥は急速乾燥の方に移行するだろうと思います。長い日数をかけて乾かすというのは、もう時代にマッチしないと思います。最近は乾燥機メーカーさんの指導で、高温乾燥はこういう処理をしているはずです。はじめに100度くらいで蒸してやり、一気に温度を上げなさい。130度あるいは160度まで上げなさい。そして、しばらくしたら温度を下げていく。100度以下まで下げてしまう。温度差という意味ではここがきつくて、乾いてきたら危なくなるんで下げていく、というようなスケジュールが多いはずです。これが本当にいいかどうかというのは説がありますが、この考え方は木材を初期に熱処理してしまうという考え方です。これは根拠のあるものなんです。蒸煮ということによって木が柔らかくなって割れにくくなる性質をつくってしまう。そういう意味では130度の熱処理を受けることによって、木材が割れないでいける。そういう性質が変わることによって以後の乾燥が楽になるという部分。そういう考え方でいえば、このことは正解なんです。これで困るのは、スギのように非常に含水率のばらついたものを、はじめに短い時間ですが処理をしますと、含水率の低いものはすでに乾いています。そこに温度を上げるから木が割れてしまうんです。高いものは割れずにいくかもしれません。同じ種類の材が入っていれば、何時間高温で処理をしてそれからどのくらい下げていけばいいかきちんとできるんですが、ムラのあるものは材が割れることになると思います。1割は犠牲にしてスピードを上げていくという考え方。そういうふうでないと高温乾燥の適用はできません。完璧に全部の製品を高温乾燥で仕上げようとしますと、これは結局時間がかかってしまいます。どこで折り合いをつけるかという使い方になるんだと思います。


高周波加熱減圧乾燥

 それから乾燥スピードを上げるという意味でもう一つ高周波の加熱減圧方式があるんです。この装置を使う場合も最初は常圧で蒸気と高周波を併用して温度を上げていきます。そして95度くらいまで上げて蒸した状態をつくっています。そのあと一気に減圧します。そうすると水が噴き出してくると言いますか、のぞき窓で見ていますとバッと水がでてくるのがわかります。ものすごいスピードで蒸発していきます。その後は真空中で高周波をかけて乾かしていくんですが、これを生材から全部乾かしますと、電気エネルギーを多く使いますのでコストがかかってしまいます。 私たちが考えたのは高周波でやるけれどもコストをなるべく下げてやりたい。この一つの方法はまず約十日間天然乾燥をします。次にオリジナルの方法では、材を一本ずつビニールシートでくるんでやるんです。ちょっと手間なんですが。そうすることによって高周波をものすごいスピードで与えても割れないんです。それから高周波乾燥がわずか1日で、約10日後には熱風乾燥で仕上げたのと同じくらいの平均含水率が20%というような製品が造られると言うことです。全工程、高周波を使うとエネルギーがかかりますので、含水率が60%くらいから25%くらいまでのところを助けてやると言うことです。そうすれば、全体のエネルギーの3分の1ぐらいで済みますから、コストが非常に安い。それから設備費が高いですが、回転率がすごく早い。毎日製品ができますからこれはいくら高い装置でも蒸気式の14日と高周波が1日でしたら14倍の値段であっても設備費は成り立つんです。


乾燥材の流通システム

 エネルギーという見方をした時に、一つの考え方なんですが、何が一番コストを安くできるかという時、木材工場では木くずですね。これをどう使っていくかということはこれからの低コスト化の問題であろうと思います。共同事業なんかでやる場合、高周波の乾燥機を媒体にしたシステムなんですが、これに対するエネルギーは製材工場からの木くずあるいは解体材といったものをボイラーで燃やして発電をさせる。そして電気を起こして高周波の乾燥機に使います。これの二次蒸気、出てきたエネルギーを仕上げ乾燥機の熱源として使ってやる。こういうシステムを共同事業で持ったとしますと、これは各製材工場から10日間ぐらい天乾した木材を持ち込んで1日処理すればいいんですね。1日処理したらあと仕上げ乾燥機においたり、そのまま直接もってかえって自分の工場に10日間ぐらいおいて仕上げられる。あるいは仕上げまでやって、共同出荷する。こういったシステムが考えられるわけです。


おわりに

国産材の品質管理という問題も重要ですが、常に要求された材を供給できる体制を作ってやることが必要だと思います。そうしないと集成材に移行するのは乾燥コストだけの問題ではなくて、乾燥材がほしくて言うんですけど、量がまとまらない。あればいつでも使うんですが、結局使えないから集成材を使うシステムにしてしまう。いつでも乾燥材が常時ストックされていて、一定量要求あったときに出せる状態、これをどうやって整備するかというのが基本だろうと思います。

☆木材研修会の全内容は年輪の里ホームページ「木の何でも情報」からダウンロードできます。


木の本
家族で家は建てられる!
You can build a house by yourselves,if you want.
著者 桂 博史
発行 新潮社
定価 1,200円

漫然と住み替えを思い付き、建売り住宅を見て回り、住みたい家を実現するために注文住宅の建築を検討した結果、たどり着いたのは自分で家を建てるという結論だった。
 素人が勉強し、プロの指導を受け、良い友人達に助けられながらついに家族で自宅を建ててしまった人の記録。『家は買うものではなく、家族で建てるもの』という筆者の教訓から、家を建てるにはたとえ自分ではしなくても、家を建てられるだけの知識は必要だ。
 そして、意図したわけではないが実践の結果、建築課程で、住環境として、木材のよさ、自然素材の良さが十分伝わってくる。


トピックス 新設住宅着工戸数の予測

平成九年四月からの消費税のアップによる駆け込み需要のためか平成八年度の新設住宅着工戸数は160万戸を超えました。しかし、その反動で住宅金融公庫の借り入れ申し込みが、今年四月以降は昨年の40%にしか達していないとう事実もあります。  左図は新設住宅着工戸数の実績と予測を示したものです。年々減少し2016年には現在の約半分の80万戸まで減少すると予測されています。今まで、住宅は築後平均26年という短いサイクルで建替えられてきました。しかし、これからは、住宅がフローからストックの時代へ変化していくようです。

(新設着工戸数予想グラフ)

 


お知らせ

 丹波年輪の里「木の館」に展示をしてみませんか。  年輪の里「木の館」の2階展示場を無料でお貸しします。展示ご希望の方は、左記までご連絡下さい。  展示内容は国産材と関係するものならば何でも結構です。  期間は1ヶ月単位とさせていただきます。(更新可)
注意事項  展示物の管理はいたしますが、常に監視することはできません。展示物の紛失、破損については責任をとりかねますので御了承下さい。
利用申し込み先
 丹波年輪の里 林産指導課
0795-73-0725

2階展示場


編集後記

私ごとながら、最近東京で「林産加工研修」を受講してきましたのでこの紙面を借りて報告させていただきます。  要点をまとめると、外材は徐々に人工林化している。天然材に比べて低質の人工林材を使うため、集成材等の高次加工品化が進んでいる。当然輸入材も高次加工品が増えてくる。今後、窓枠、建具、家具の輸入量も増えるとのことです。  また、トピックスにも書いていますが新設住宅着工戸数も年々減るようです。これは、住宅もスクラップ アンド ビルトから、質の充実へ移行するためだそうです。そして、これからはリフォーム市場が増えるだろうとのことです。  また、住宅に関しては建築基準法が、仕様規定から性能規定へ変わるとのこと。つまりは、構造計算ができない木材は使えなくなるかも知れません。今後構造材はエンジニアリングウッドになっていきます。  国産材もエンジニアリングウッドとして利用するには、最低限のこととして「乾燥」が必要です。 今号では前号から引き続き乾燥を特集しましたが、外材と競争するには乾燥することがスタート地点だと思います。  生材が使える時代もそう長くはないかも知れませんね。