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第109号-第110号 (P3) 「木材の調湿・断熱性能評価」

兵庫県立農林水産技術センター(森林林業)研究報告から
「木材の調湿・断熱性能評価」  永井 智

このテーマは、木材の調湿性能や断熱性能等の数値データを蓄積し、木材利用を促進することを目的に、兵庫県木材利用技術研究会から委託を受けたものである。
次の4点について試験を行った。

 (1) デシケータ内における木材の存否と温湿度変動の関係
 (2) 環境の湿度変動に伴う木材の吸・脱湿性
 (3) 木材の熱伝導率
 (4) 木材容器内の温湿度変動

(1) 部屋に木材を置くだけでも湿度は適当に保たれる
「デシケータ内における木材の存否と温湿度変動の関係」について調べた結果、木材には、空気中の水蒸気を細胞壁に吸着したり(吸湿)、細胞壁から空気中に放出したり(脱湿)できるなど、周囲の湿度のばらつきを抑える機能が備わっていることが確認された。

【行った試験】
温湿度の制御が可能な環境試験室内にデシケータ(224×200×170mm)を設置し、デシケータ周囲の温度を変動させる。この時、デシケータ内の温度が追随して変動するとともに、相対湿度(%RH)も変動しようとする。デシケータ内に木材が存在することにより、温湿度はどのように変動するか?
●試験体の寸法
長さ20×幅10×厚さ2cm
●試験体の種類
8樹種9体(スギ、ヒノキ、ホワイトウッド、ベイヒバ、ベイマツ、レッドウッド、豪州ヒノキ、トチノキ)
●使用した温湿度センサー
TR-72U(㈱ティアンドディ製)

【結 果】
●デシケータ内の温度変動は、周囲の温度変動に追随して変動。
●デシケータ内の湿度変動は、木材を設置していない場合、きわめて振幅の大きい湿度変動。木材を設置した場合、60%RH強~70%RH強の湿度を維持。

(2) 木材はどれくらいの水分を吸着・放出できるか
「環境の湿度変動に伴う木材の吸・脱湿性」について調べた結果、湿度が大きく上昇・低下する場合、木材をたくさん露出させておくほど、水分をすみやかに吸着・放出することが確認された。

【行った試験】
恒温恒湿器内を20℃・65%RH(木材の平衡含水率12%)に制御し、試験体を調湿。器内制御値を20℃・92%RH(木材の平衡含水率22%)に変更し、52日間の吸湿重量の経時変化を追跡。器内制御値を20℃・65%RHに変更し、52日間の脱湿重量の経時変化を追跡。経過期間と吸・脱湿重量の関係や、密度と吸・脱湿重量の関係について検討。
●試験体の寸法
長さ10×幅10×厚さ1 ないし 2cm
●試験体の種類
8樹種18体(スギ、ヒノキ、ホワイトウッド、ベイヒバ、ベイマツ、レッドウッド、豪州ヒノキ、トチノキ)

【結 果】
●65%RH→92%RHにした際、1cm厚の試験体で約2.4~4.3g、2cm厚の試験体で3.7~8.3gの吸湿重量。
●例えば、6帖一間に高さ1mの腰板を設置したと仮定。木材の露出面積は12.6㎡であり、含水率が12%から22%に平衡しようとする際、厚み1cmで約3.0~5.4kg、厚み2cmで4.7~10.5kgの水分を吸着可能という試算。
●密度の大きい木材ほど、また、厚み(体積)の大きい木材ほど、許容できる吸湿(脱湿)重量も大きい傾向。
●日変動レベルでは、ごく表層のみが吸・脱湿に寄与。木材の調湿機能を日変動レベルで活用するためには、薄板を大量に使用(面的使用)した方が厚板を少量使用するよりも効果的。
●梅雨期や夏の多湿期など、長期間にわたって湿度をコントロールする必要がある場合には、密度が大きく、厚みのある木材の方がキャパシティが大。

(3)木材は熱を伝えにくく、断熱性が高い
熱伝導率は密度と比例関係にある。「木材の熱伝導率」について調べた結果、木材は他の材料よりも比較的密度が小さいため、熱伝導率が低く、断熱性の高い材料であることが確認された。

【行った試験】
木材10数種の熱伝導率を測定し、樹種間、あるいは他の材料と比較。
●試験体の寸法
長さ20×幅20×厚さ1~3㎝
【結 果】
●密度の大きい試験体ほど熱伝導率が高い傾向。すなわち、密度の大きい試験体ほど断熱性が低い。
●木材試験体の熱伝導率は 0.06~0.16(W/mK)の範囲にあり、熱伝導率が低く、断熱性の高い材料であることがわかる。(グラスウールや羊毛は0.04、コンクリートは1、鉄は83.5、アルミニウムは236)

(4)木材に囲まれた部屋の湿度はかなり快適
密閉された木材容器内では、周囲の湿度の上昇・低下にかかわらず、ほぼ一定の湿度が維持されていた。

【行った試験】
温湿度の制御が可能な環境試験室内に異なった素材からなるボックスを設置し、ボックス周囲の温湿度を変動させる。この時、ボックス内の温湿度がどのように変動するかについて比較検討。
●試験体(ボックス)の内寸法
幅224㎜×奥行200㎜×高さ170㎜
●ボックスの種類
デシケータ、スギ2体・スタイロフォーム(30㎜厚)

【結 果】
●温度変動
ボックス周囲の温度に追随するように各ボックス内の温度も変動
●湿度変動
デシケータが温度に影響されて極めて大きな振幅、次いでスタイロフォームの変動が大。
スギ1、2の湿度は明らかにわずかな挙動範囲
●スギ1、2が試験期間を通じて高い調湿機能を発揮していることを確認

まとめ
① 木材表面の露出面積が大きいほど、湿度の日変動や急激な湿度変動の抑制に効果がある。
② 梅雨期や夏の多湿期など、長期間にわたって湿度の上昇を抑制する必要がある場合には、密度が大きく、かつ厚みのある木材ほど許容できる吸湿重量が増加する。
③ 厚みのある木材を使うほど、熱容量、ひいては断熱効果が高まる。
④ 木材を面積的にも体積的にも多用することは、より快適な温湿度環境を保つことにつながる。