メイン林産指導課の紹介情報誌 「林産だより」 平成21年度 >第112号(P2-3) 木造校舎の補強と改修 ~篠山市立八上小学校を調査して~

第112号(P2-3) 木造校舎の補強と改修 ~篠山市立八上小学校を調査して~

木造校舎の補強と改修 ~篠山市立八上小学校を調査して~

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藤田宜紀建築設計事務所 藤田宜紀

スクールニューディールのスローガンで今盛んに鉄筋コンクリート校舎の耐震補強工事が行われている。では木造校舎はどうなっているのだろうか。建て替わったとはいえ、消えてしまったわけではないだろう。補強したというニュースも聞かない。補強の方法が無いのだろうか。そんな疑問から、また木造に携わるものの関心事として調査を思いたったわけである。
調べてみると県下には17棟が現役で存続しており、この中から篠山市立八上小学校を選んで今春調査した。調査はまだ進行中でまとまったものとはなっていないが、目視中心の一次調査の所見を、地域材を見守る本誌をかりて木材関係を中心に報告したい。

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■八上小学校建築概要

竣 工     昭和12年
構 造
 (南北校舎棟)木造2階建在来工法、コンクリート布基礎
 (渡り廊下)木造平屋2ヶ所
床面積
 (校舎1棟)1階478.5㎡
       2階446.5㎡
      計 925.0㎡
これが2棟あり両棟で 1850.0㎡
 (渡り廊下)     49.9㎡
 (玄関ポーチ)    26.0㎡
屋根仕上  石綿セメント瓦葺(竣工時)
外壁仕上  杉下見板張り、一部モルタル塗
外壁建具  引違い及び回転木製ガラス窓
内部床仕上 ナラフローリング張
内部壁仕上 腰板張り、合板ペンキ塗
内部天井  有孔ボードペンキ塗
床 高   1階 780㎜
階 高      4320㎜
軒 高      8900㎜
主な柱   150角(桧又はツガ)
最大スパン 2階床 7500㎜
      120×480 2丁合せ梁

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■法令遵守

木造校舎の改修は文化財のような復原保存と違って、今後も使い続けることを大前提とする必要がある。本校のように現存する木造校舎はほとんどが建築基準法以前につくられたものだろうから現行法に照らしてみれば各校とも支障は出てくるはずである。しかし長く使い続けるためには、補修や補強だけでなく既存不適格部分にも対処しなければならない。
本校の主な抵触箇所は2点。まず大規模木造にともなう防火壁は南北棟とも面積から不要であるが、渡り廊下で何らかの防火措置が必要となること。また教室をとりまく間仕切は防火上主要な間仕切として天井裏までつくらなければならないことである。
その他は必要な防災設備を備えなければならないが、対処しても姿が一変する大手術ではない。それは学校建築の基本的な規定、例えば廊下巾や階段の構造、天井高、採光面積等はこの頃すでに出来上がっており、その後は不燃化に向う流れに法整備も移ったからだろう。

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■木構造

本校は在来工法でつくられており、それまでの伝統工法から一変してハイカラなものであったろう。関東大震災以後、洋小屋と筋交を入れたトラス構造を組み合せた在来工法への移行期と考えられる。
しかし現在からみれば計算基準がかなり違っている。現存する壁には角材の筋交がボルト止めされており、水平面は2階床面の教室部分に1間の火打ちが全スパンあるが、廊下部分や小屋面では個所数は半減する。1間の火打ちはこのあと試みられる壁面、水平面とも角材を駆使した完全なトラス構造のさきがけとも考えられるが、現在の構造計算では不十分であり、主力は面材を仕様した構造面をつくることが多い。
本校の天井裏、小屋裏を見るにつけ、その大工の技は見事で、現在の便利な金物のない時代にボルトとわずかな帯金物で組み上げられ、部材サイズも的確である。
問題は弱点の土台まわりの蟻害と劣化である。さらに基礎の鉄筋の有無と地盤の不同沈下が気がかり。今後の調査を待ちたい。
木造の耐力アップ等改修は外観保存が大前提。安易に窓面にブレース等を設けたりは出来ない。補強は耐力面材の取付と南北面の柱梁接合部を特殊金物で直接補強することを検討している。在来工法では外壁をはずして施工するのが望ましいが、工費工期ともかかるので住宅と違って校舎では内部からの施工を考えた方がよいであろう。
いづれにしても木造校舎の補強は可能な予感を得た。ただどのような工法をとるにせよ新築と同じように建物毎に特徴を把握して、きめ細かい対処が必要である。

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■木材保存

何といっても黒い杉の下見板である。驚いた事に塗り替えはされているが板の更新は一度もされていないようだ。わずかな軒で2層分の下見板が70年もよく耐えたと感心する。他の建材ならこうはいかない。そして部分的な補修はしても高圧洗浄して再塗装すれば、なお使えそうである。壁はこれと内部の合板だけで大壁となっており、断熱材やルーフィングすらない。冬は寒く隙間風もあるだろうが、壁内結露など起こりようがない。浸水があってもすぐに乾いてしまうだろう。このガランドウが木材保存には良いのかも知れない。
一方、床下はうってかわって湿潤で通風がない。これだけの床面積にしては床下換気口が小さく、基礎の通風口も少ないためである。防湿コンクリートもなく、土中の湿気は床下に溜まり、蟻害は起こりやすいはずである。強固な布基礎を全館に巡らし、洋風デザインを実現することを優先して、換気口はこれでよしとしたのだろう。
もう一つの特徴の木製ガラス窓も概ね健在で、建具の破損や変形はあまりなく、防寒ジャクリにきっちり納る。建具を再塗装し、ガラス押えを交換、シールを施せば再使用は可能である。ただ敷居部分の水切と立上りに問題がある。強風下では雪や雨水が浸入する。引違い窓の宿命だが、さいわい連窓が多いので金属の水切で敷居を保護し、引違いの1枚の建具を固定して内側に立上りを追加すれば防げるだろう。ランマの回転窓も同様である。
窓の性能は室内の居住性に直接関係するので性能向上を期待してアルミ建具によく交換されるが、外観を損なったり失うものも大きい。本質を理解した対処が必要である。